静けさを仕立てる内装設計 〜nol kyoto sanjoを訪れて〜
- Category:
- Writer:熊谷 直
こんにちは。設計士の熊谷です。
京都・三条にあるホテル「nol kyoto sanjo」を訪れました。
宿泊したのは一泊でしたが、空間そのものが“心をほどく”ような時間を与えてくれたことがとても印象に残っています。

このホテルの印象を一言で表すなら「静かで、上質」。
ただ、その“上質さ”は、どこか声高ではなく、肌にすっとなじむような感覚。
京都らしい素材の選び方と、手仕事のニュアンスが、空間全体にやさしく溶け込んでいました。

客室は、いわゆるラグジュアリーホテルのような華やかさとは異なり、暮らしの延長にあるような心地よさがベースになっています。壁には左官や織物のようなテクスチャが感じられ、間接照明の使い方も秀逸で、時間がゆっくりと流れていくような落ち着きがありました。
特に印象的だったのは、客室に設けられた“滞在するための余白”。

たとえば、窓際に設えられたデスクと一人掛けの椅子。そこには過剰な装飾も機能もありませんが、旅先でふと手紙を書きたくなるような、そんな小さな物語を想像させてくれます。
また、小上がりのスペースや、さりげなく置かれた茶器や照明が、空間に温度と深みを与えてくれていました。
私たちが住宅を設計するうえでも、こうした「暮らしに寄り添う静けさ」をどうつくるかは、ひとつの大きなテーマです。
素材そのものが語る質感や、光と影が織りなすリズム、余白の中に潜む豊かさ──それらは、丁寧に暮らしたいと願う方にとって、何より大切な設計の要素だと思います。
nol kyoto sanjoの空間は、五感を静かに満たしながら、滞在者自身の感性をそっと引き出してくれるような場所でした。
どこか「整いすぎていない」ことも魅力のひとつで、それはつまり、住まい手が自分の感性で補っていける“余白”があるということ。
設計士として、私はそうした“余白のある空間”を、とても大切にしています。
住まいは、完成した瞬間が終わりではなく、そこから始まる日常の器。
だからこそ、住む人のリズムに静かに寄り添うような空間でありたいと、いつも思いながら図面を描いています。
もし、「毎日が少しだけ整うような家」を考えてみたい方がいらっしゃいましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
旅の記憶のように、日常をやさしく包む空間を、一緒にかたちにしていけたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事を書いた人