『ホテルムーンビーチ』を訪れて|余白と無駄がもたらす“豊かな暮らし”と住宅設計の可能性
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- Writer:熊谷 直
こんにちは。設計士の熊谷です。
先日、沖縄にある名建築『ホテルムーンビーチ』を訪れてきました。

美しい自然環境と見事に調和した開放的な空間に身を置きながら、改めて「建築が人に与えるゆとりや豊かさとは何だろうか」と、じっくりと思いを巡らせる素晴らしい時間を過ごすことができました。
【3,000坪から2万1,000坪へ。スケッチから始まった名建築】
このホテルムーンビーチには、建築好きの間で語り継がれる有名なエピソードがあります。
設計を手掛けたのは、当時わずか34歳という若さだった建築家・国場幸房氏です。兄である國場幸一郎氏から「『月の浜』に300室程度のリゾートホテルを建てる」という計画を聞かされた幸房氏は、設計を任された喜びに胸を躍らせ、すぐに現地へ飛んで行ったそうです。
三日月型に描かれた美しい浜辺を一目見た幸房氏は、湧き出るインスピレーションのままに、一気にスケッチを書き上げました。
しかし、いざ冷静に図面と敷地を照らし合わせてみると、その魅力的なスケッチは、当時購入していた3,000坪の敷地から建物のほとんどが大幅にはみ出していたのです。
自身の見通しの甘さに、幸房氏はすっかり落胆してしまいました。しかし、その情熱的なスケッチを見た兄の幸一郎氏は責めるどころか、弟の案をそのまま実現させるために周囲の土地を新たに買い増し、なんと最終的には2万1,000坪にまで敷地を広げたのです。
このスケール感あふれる決断こそが、今も多くの人々に愛され続けるムーンビーチの原型となりました。
【既成概念を疑い、「使わない空間」が生み出す遊び】
幸房氏は設計にあたり、「リゾートホテルとはこうあるべきだ」という当時の既成概念をまず疑うことからスタートしたと言います。

ただ客室を効率よく詰め込むのではなく、訪れた人々が心から安らぎ、集える憩いの場にするにはどうすべきか。あらゆる可能性を繰り返し思考し続けた結果生まれたのが、風が吹き抜ける巨大な吹き抜けや、用途をあえて特定しない広大な半屋外空間でした。

これは合理性や効率だけで考えれば、コストのかかる「使わない空間」であり、無駄の多い設計と言えます。
それでも幸房氏は、こう語っています。
「人間には無駄が必要でしょう。無駄があるから遊びがあるんだ」

ホテルムーンビーチを歩いていると、この「無駄」や「遊び」こそが、人の心を解きほぐし、深い豊かな心地よさを生み出しているのだと肌で実感させられます。
【住宅という限られた枠の中で、設計士として思うこと】
この建築に触れながら、私自身の日々の設計業務についても深く考えさせられました。
もちろん、リゾートホテルのような広大な敷地と、私たちが手掛ける個人住宅とでは、スケールも条件も大きく異なります。特に千葉県や都内、埼玉県、茨城県などで注文住宅をご検討されるお施主様にとって、敷地面積や建築予算には明確な「限られた枠」が存在します。
ハウスメーカーなどの合理化された家づくりでは、どうしても「坪数あたりの無駄をなくすこと」や「部屋数・収納の効率」が最優先されがちです。
しかし、部屋の隅にふっと光が落ちる小さな余白や、用途を決めつけない小さな縁側のような空間——そうした「使わない空間(=余白)」こそが、住む人の心に日常のゆとりをもたらしてくれるのではないかと私は考えています。

限られた予算や面積の中で、そうした「遊び」や「余白」をご提案し、お施主様にその価値をご理解いただくことは、決して簡単なことではありません。予算の効率を求めれば求めるほど、無駄に見える空間は削ぎ落とされそうになります。
それでも、「ただ暮らすための箱」ではなく、人生を豊かに楽しむための住まいをつくるためには、どこかに心地よい“遊び”が必要です。
「既成概念にとらわれず、自分たちにとって本当の豊かさを追求したい」
いつかそんな自由な発想をお持ちのお施主様と巡り合い、限られた枠を超えた唯一無二の住まいづくりをご一緒できたら、設計士としてこれ以上の喜びはありません。
【居心地の本質を考える家づくり】
千葉県全域をはじめ、都内や茨城、埼玉のエリアで、大手ハウスメーカーの規格住宅では物足りなさを感じている方や、ホテルライクで静寂のある美しい住まい、自分たちらしい自由設計の家をご検討中の方は、ぜひ一度「空間の余白」についてお話ししてみませんか?
お家づくりに関するちょっとした疑問や、「こんな空間をつくってみたい」という想いなど、いつでもお気軽にご相談ください。
皆さまの暮らしに寄り添う何かしらのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事を書いた人